おかしなご縁

食べ物の記憶は割と鮮明にあり、自分の食い意地に苦笑いするのが初めて合楽教会に行った時のこと。小学校2年生だったか、でっかい建物に入り絵本で見るような重厚な応接間に通され「父は何か間違いをしているのではないのか、ソファに座っても良いのか、怒られはしないか」とビクビクしていた。そのうち誰かが入ってこられ上座に座られ父と何か話を始めた。怒られずほっとした。

そのうちエプロンを着けた女の人が来て、テーブルの真ん中に置かれた菓子器、そこには銀色のセロファンに包まれた、いかにも子供心をくすぐるお菓子がこんもりと盛られていた。「これは誰に出されたものなのか、私たちか!?いやいや落ち着け、そんなはずはない、こんな立派なものを頂けるはずは無い・・・」私の心はそのお菓子を前に動転し心臓がドキドキするほどだった(誇張なし)。その様子に気がつかれたのか、上座の人が女の人に言って私と兄姉に一つずつ取り分けてくれた。それからが至福の記憶、銀のセロファンをそっと開けると、爽やかな甘い香りが鼻腔をくすぐり取り出せば、レモンの形をして薄いレモン味のホワイトチョコがふわふわのスポンジにコーティングされた洋菓子。甘くて優しくて、今までで最高のお菓子の記憶になった。

あれから40年近く経つ。あのレモンケーキは食いしん坊の私と教会との縁を取り持った、かけがえのない一つだ。

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